まとめ
- 紅葉真っ盛りの山で繰り広げられる高貴な美女一行の様子と舞が魅力
- 宴の後、後シテ<鬼女>と腕の立つ武将の戦い(舞)
- 妖艶な主人公や勇ましい武将を取り巻く状況は、本当は、紅葉の山なのか、施された「まやかし」の空間なのか、ワキ・ワキツレ・アイが一つ一つ明かしていく謎解きの要素もある筋立て
- 通常の番組よりも登場人物が多い
CGなど存在しない時代の視覚的表現も見もの - 『船弁慶』での作者でもある観世小次郎信光(世阿弥の甥音阿弥の第七子(1435 あるいは 1450 – 1516))により500年以上前に制作された作品
あらすじ
旧暦9月*1の、紅葉が美しいとある山中にて。
高貴な風情をした女が、侍女を連れて、山の紅葉を愛でようと幕を打ち廻らして、宴を催していました。その酒席に、鹿狩りの途中であった平維茂(たいらのこれもち)*2の一行が通りかかります。維茂は、道を避けようとしますが、気づいた女たちに「是非ご一緒に」と誘われるまま、宴に加わります。高貴な風情の女はこの世の者とは思えぬ美しさ。酒を勧められ、つい気を許した維茂は酔いつぶれ、眠ってしまいます。それを見届けた女たちは、いずこにか姿を消してしまいます。
ちょうどそのころ、八幡大菩薩*3の眷属(けんぞく)*4、武内の神*5が先の山(実は信濃国戸隠山)への道を急いでいました。維茂を篭絡(ろうらく)*6した女は、戸隠山の鬼神だったのです。武内の神は、維茂の夢に現れてそのことを告げ、八幡大菩薩からの下された神剣を維茂に授けました。さて、夢から覚めた維茂の目の前には、鬼女が姿を現し、襲いかかってきます。維茂は勇敢に立ち向かい、激しい戦いの末に、みごとに神剣で鬼女を退治しました。
狩り | 自然の中で季節の花や植物を求め、その美しさを観賞したりすること。 現代では、「紅葉狩」以外に美しさを観賞をすることには用いない。 |
旧暦9月 | 現在の暦で、9月下旬から11月上旬。 |
たいらのこれもち 平維茂 |
平安時代中期(1000年以上前)の武将。将軍。 |
八幡大菩薩 | 八幡神。応神天皇の神霊と言われている。 日本各地の八幡宮・八幡神社・八幡さまなどで祀られている。 |
けんぞく 眷属 |
一族。親族。郎党。従者。 (眷属神:神の使者) |
武内の神 | 武内宿禰。 日本各地の神社で祀られている。 |
ろうらく 篭絡 |
うまくまるめこんで自分の思う通りにあやつること。 |
背景
作者 | 観世小次郎信光 |
題材 | 鬼女紅葉伝説 鬼退治伝説 |
季節 | 旧暦9月 → 9月下旬から11月上旬頃 |
分類 | 五番目物 |
登場人物・装束
撮影 前島写真店
2017年12月開催の梅若研能会で務めました演者を記載しています。
前シテ 女 |
後シテ 鬼女 |
ツレ 侍女 |
ワキ 平維茂 |
ワキ |
ワキ |
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冠り物 | 梨子 折烏帽子 |
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仮髪 | 鬘 胴箔紅入鬘帯 |
赤頭 赤地金緞鉢巻 |
鬘 紅入 鬘帯 |
白鉢巻 | ||
能面 | 若女 または 増、 近江女 |
顰 | 連面 | |||
上着 | 法被
繍紋腰帯 |
紅入 |
長絹繍紋 腰帯 |
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着付 |
摺箔 襟 無紅縫箔腰巻 |
紅入段厚板 襟 紅入縫入腰帯 |
摺箔襟 赤 |
厚板 襟 |
無地 素袍 襟 |
無地 素袍 襟 |
袴/ 裳着 |
半切 | 白大口 | ||||
扇 | 鬘扇 | 鬘扇 | 男扇 | 鎮扇 | 鎮扇 | |
小道具 | 紺地 打杖 |
小刀弓矢 | 小刀持太刀 | 小刀勢子竿 | ||
作物 | 一畳台・紅葉山 |
小物は、分かりやすさを優先して、関連のある箇所に並列に記載しています。
出典 観世流謡曲百番集
参考
『紅葉狩』- 耕漁『能楽図絵』前編 上、『能楽百番』
(→ 「浮世絵検索」)
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