| あらすじ | 背景 | 登場人物・装束・キャスト |
能『海士』*1まとめ
- 讃岐国志度浦*2を舞台とした切能*3(きりのう)、太鼓物。
- 大臣 藤原房前*4が生母を探し、亡母の霊と再会する話
- 生母が我が子と世襲のために命を懸け
壮絶な出来事の末に最期を迎えたが、弔われなかったと知らされる - 房前は、飛鳥~奈良時代に政権の中枢で活躍した、
平安時代に栄えた藤原道長・頼道の直系の子孫 - 8世紀から伝わるいくつかの題材を基に制作されたらしい
- 房前の出生にまつわる話
- 藤原氏の女性が唐の后になったという伝説
- 海底に奪われた宝物を取り返す海士の伝承
- 房前が志度寺に寄進した話
能『海士』 あらすじ
大臣、藤原の房前は生母が讃岐志度の浦の海士と知って、その地を訪れます。
来かかった海士に尋ねると、生母の死の経緯を知っている海士でした。
かつて、唐土から送られた宝珠を途中で竜神に奪われ、わざわざこの地まで来た藤原の淡海*5は契りを交わした海士に宝珠の奪還を命じ、生まれた子を世継ぎにすると約束します。
海士は海底にくぐり、竜宮に飛び入って宝珠を盗み、胸(乳)の下を切り裂いて珠を押し込まて戻りましたと、仕方話*6(玉の段*7)で物語り、実は自分こそその海士で、房前の母ですと名乗って海中へ消えます。
房前が丁重な法事を営むと、母の霊は成仏を喜んで法華経を手にした龍女の姿となって現れ、経文も唱え舞を舞います。
あま *1 海士 |
海で魚貝を取る、 現在の志度湾では、牡蠣や海苔の養殖が |
しどのうら *2 志度浦 |
讃岐国(現在は香川県)志度湾
志度寺 住所:香川県さぬき市志度1102 |
*3 切能 |
5つのジャンルに分類する際に 五番立の際に、最後の五番目に |
ふじわらのふささき *4 大臣 藤原の房前 |
藤原不比等の二男・藤原四兄弟の一人 飛鳥時代から奈良時代前半に 天皇制が確立し始めていた中央政権のもと 兄 武智麻呂と、父 不比等の世襲で |
ふじわらのたんこう *5 藤原の淡海 |
藤原不比等。 つまり、実父が、唐から送られたが竜神に 不比等は、天武天皇の擁立に功績があり 後の世となれば、藤原氏の繁栄は 不比等は、房前に世襲させたいという意図が 兄弟を競わせながら、政局の中で |
しかたばなし *5 仕方話 |
身振り・手振りをまじえてする話。 |
たまのだん *5 玉の段 |
能『海士』の主人公が、生まれてくる 仕舞、舞囃子、独吟、一調で |
能『海士』 背景
作者 | 原作 金春権守(金春禅竹の祖父)周辺か 改作 世阿弥 |
題材 | 房前が讃岐国志度寺へ寄進したエピソード 志度寺に伝わる海士が玉を奪還する伝説 藤原氏にまつわる伝説 |
季節 | 仲春 →啓蟄(けいちつ)から清明(せいめい)の前日まで (二十四節季の啓蟄と春分) つまり、現在の暦で、3月6日頃から4月4日頃まで |
分類 | 五番目物 太鼓物 |
能『海士』 登場人物と装束
前シテ 海士 中村裕 |
後シテ 龍女 中村裕 |
子方 房前大臣 小林秀政 |
ワキ 従者 森常好 |
ワキツレ 従者 森常太郎 |
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冠り物 | 輪冠 龍戴 |
金風 折烏帽子 |
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仮髪 | 鬘 無紅鬘帯 |
黒垂 紅入鬘帯 |
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能面 | 深井 または 近江女 |
泥眼 | |||
上着 | 水衣 | 舞衣 |
単狩衣 繍紋腰帯 |
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着付 |
摺箔 襟 無紅縫箔腰巻 |
鱗箔 襟 紅入縫入腰帯 |
紅入縫箔
襟 |
段熨斗目 素袍 襟 |
無地熨斗目 素袍 襟 |
袴/ 裳着 |
色大口 | 白大口 | |||
扇 | 無紅鬘扇 | 童扇 | 神扇 | 鎮扇 | 鎮扇 |
小道具 | 鎌
海松藻 |
経巻 | 小刀 | 小刀 | |
作物 | なし |
間狂言:浦の男 内藤 蓮
小物は、分かりやすさを優先して、関連のある箇所に並列に記載しています。
出典 観世流謡曲百番集
舞囃子『柏崎』 | 狂言『茶壷』 | 能 『海士』 |
写真 前島写真店
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